【判例】 会社側は、職責に堪えないことを理由とすればどんな職位、賃金の調整も許されるか? (2018年3月29日)- HRM.com
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【判例】 会社側は、職責に堪えないことを理由とすればどんな職位、賃金の調整も許されるか?(2018年3月29日)

案例:

李氏は2006年1月某社へ入社し、数回の労働契約締結を経て、2012年1月4日に期間の定めのない労働契約を締結した。

労働契約によると、李氏は営業経理職として、20名の営業担当の管理を任されていた。李氏の月給は基本給11000元に勤続手当500元、職務手当2000元にインセンティブという構成になっており、賃金支払日は翌月5日、インセンティブの支払いは月末となっていた。2016年1月、会社側は従業員の昇進及び降格規定を発表し、営業担当については年初の個人営業指標の60%、営業経理は営業チーム全体で年初目標の100%達成で合格とされた。しかし2016年度、李氏の営業チームの達成度は80%に留まった。

2017年2月28日、会社側は李氏を職責に堪えないとの理由で一般の営業担当者へ降格させたが、職務手当の調整は行わなかった。

2017年2月より、会社側は一般営業担当と同じ基準で李氏へインセンティブを支払いはじめた。李氏はこれを、会社側が自身のインセンティブの上前をはねていると認識し、2017年4月28日、賃金未払いを理由として会社を辞め、同時に経済補償金とインセンティブの差額の支払いを求めた。会社側は、李氏が職責に堪えなかったため「労働契約法」の規定に基づき李氏の職位を調整し、調整後の基準に基づいてインセンティブを支払ったとして、李氏の求めを拒否した。李氏はこれを不服として、労働人事争議仲裁委員会へ仲裁を申し立て、会社側へインセンティブの差額16800元と、労働契約解除による経済補償金224388元の支払いを求めた。

争点:

李氏は職責に堪えないと言えるだろうか?また、会社側が調整後の基準に基づき李氏へインセンティブを支払ったことは、賃金の上前を跳ねる行為に該当するか?

判決:

労働人事仲裁委員会は審理の結果、会社側の李氏に対する考課条件の設定は明らかに合理性を欠き、会社側の李氏が職責に堪えないとする判断は妥当ではないとの判断を下した。

一方、双方には李氏が職責に堪えるか否かで争いが生じており、会社側が李氏の降格を基にインセンティブの算定式を変更した行為は「労働契約法」にある賃金の上前を跳ねる行為には該当しないとの見方を示した。

最終的に、労働人事争議仲裁委員会は李氏のインセンティブの差額10423元の支払いを会社側に命じたものの、労働契約解除による経済補償金の支払いは認めなかった。

分析:

一、会社側の考課基準は合理的か?

「労働契約法」には、労働者が職責に堪えず、使用者が労働者へ訓練を施しまた職位を変更してもなお職責に堪えないときは、使用者は労働者との労働契約を解除できるとしている。労働者が職責に堪えるか否かは、一般的に使用者が予め設定した考課基準によって測られるが、考課が有効とされるためには以下の点に注意しなければならない。

ⅰ、考課の内容が法律の規定に反しないこと。

一部使用者では労働者の出勤率を職責に堪えるか否かの絶対的指標とし、労働者にやむを得ない欠勤や病欠があろうとも、出勤率が一定以下であるだけで不合格としているが、このような考課は労働者が医療期間を享受できるという合法的権益を排除するものであるから、無効となる。

ⅱ、考課基準が明確かつ具体的であること。

一部使用者では、考課の基準や範囲があいまいで、実現可能性を有していないことがよくある。「よく仕事をすること」を考課の要件に挙げながらも具体的な内容が無かったり、「営業業績を上げること」としながらも具体的な数字が出ていない、等の例が挙げられる。

ⅲ、考課基準に合理性があること。

使用者は同職位の労働者の業務量を参考に考課基準を設定することができるが、この基準を故意に労働者が達成できないほど高く設定することは許されない。

ⅳ、考課基準を事前に周知すること。

考課基準を設定した後、使用者はこれに関連する事項を事前に労働者へ周知し、十分知らしめなければならない。

本案件に戻ると、会社側の考課基準や内容は法に適っており、基準も明確かつ具体的で、また李氏にも事前に告知している。しかしこれが有効か否かは、考課基準の設定が合理的範囲内で為されたかを総合的に判断する必要がある。

まず、考課規定を見ると、李氏以外の営業担当者20名の目標達成ラインが年初目標の60%であるのに対し、李氏はチーム全体で年初目標の100%達成と、目標達成ラインが営業担当者に比べて遥かに高い。

次に、仮に各営業担当者の年初目標を10万元とすると、李氏はチーム全体の販売額で考課されるから、20名の営業販売員は総額200万元の売上を出さなければならない。このとき、もし各営業販売員が6万元の販売成績を挙げたとすると、チーム全体の売上は120万元となり、李氏以外は考課基準を達成するものの李氏本人は達成まで80万元足らず、未達ということになる。李氏の考課基準が著しく合理性を欠くのは明白で、これは労辯発[1994]289号文書の、使用者は故意にノルマを高く設定してはならない、との規定に明らかに反する。会社側が李氏を職責に堪えないと断定し降格させ、インセンティブの算定式を変更したことは妥当性を欠き、会社側は李氏へインセンティブの差額を支払うべきである。

二、会社側は経済補償金を支払わなければならないか?

法律の規定では、使用者が労働者へ支払う労働報酬が不足している場合、労働者は使用者との労働契約を解除でき、また使用者は労働者へ労働契約解除による経済補償金を支払わなければならないとされている。

この法律の立法趣旨は、労働契約の当事者双方がその権利を行使し、また義務を履行する際に誠実信用の原則に反しないよう促すことである。もし使用者が誠実信用の原則に抵触せず、かつ客観的な原因がもとで引き起こされた不明瞭な賃金算定や争議により、使用者が「定められた期間に、満額の」労働報酬を支払えないときは、法で定める経済補償金を支払わなければならない状況には該当しないのである。

本案件においては、確かに李氏のインセンティブに差額があったものの、これは李氏が職責に堪えるか否かによって引き起こされた争議事項であり、上述の条項にあるような「定められた期間に、満額の」労働報酬を支払わなかったことにはならないのである。ゆえにこの点について、李氏の主張は認められないであろう。