【判例】労災認定を受けた労働者は、どのような基準をもって「他の職位への配置が難しい」と見做されるか? (2018年7月3日)- HRM.com
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【判例】労災認定を受けた労働者は、どのような基準をもって「他の職位への配置が難しい」と見做されるか?(2018年7月3日)

案例:

費氏は某鉄塔製造会社に務めていた。双方は労働契約を締結しており、法に基づき社会保険費を納付していた。

2015年1月、費氏は市内人民医院で初期のじん肺と診断され、同3月、市人力資源社会保障局は費氏の労災を認定した。

同9月、市労働能力認定委員会は費氏の労働能力障害を六級と認定し、生活には差し支えないとされた。費氏は会社側へ、①双方間の労働関係を維持すること②2015年10月1日より定年退職まで、障害手当金を支払うことを求めた。

会社側は職業病の診断と労災認定については異議を唱えなかったものの、配置転換能力や職位の変更については、「一通り職位の選択肢を示しており、他の職位への配置が難しい状況には該当しない」として、退職と障害補償金の支払いを拒絶した。

争点:

障害等級5-6級の労災認定を受けた労働者が、使用者との労働関係を維持している状況下にあって、退職及び障害補償金の支払いに争いがある場合、「適切な職位への調整」や「他の職位への配置が難しい」事実をどのように認めるべきか?

判决:

仲裁庭は、「労災保険条例」第三十六条、「中華人民共和国労働争議調停仲裁法」第六条の規定により、①双方間の労働関係を確認する②その他の請求を棄却する、との裁定を言い渡した。

分析:

「労災保険条例」第三十六条には、「労働者が業務により身体に障害が残り、障害の程度が5級、6級と認定されたときは、以下の待遇を受ける。

使用者との労働関係は維持される。適切な業務を手配できないときは、使用者は毎月障害手当金を支払う」とある。この規定から、労働者は、職位の調整が難しいというだけで、仕事を辞し毎月障害手当金を受け取ることができることがわかる。本案件において、費氏は職業病と診断され、実際に選択可能な他の職位の提供を受け、治療が終わった後は会社へ復帰している。

会社側は職位の調整を行うときは、現状に基づき選択可能な他の職位を一通り打診し、費氏の適性により近くなるよう職位を調整しなければならない。費氏が会社側の職位の調整を拒んだからと言って、一概に「他の職位への配置が難しい」状況であるとは言えないのである。

仲裁委は「中華人民共和国労働争議調停仲裁法」第六条の「労働争議が発生したときは、当事者は自身の主張について証明する責任を負う。争議事項に関する証拠で使用者が管掌するものについては、使用者はこれを提供なければならない。使用者がこれを提供しないときは、使用者は不利となる結果について責任を負う」との条文を引用した上で、費氏の職位離脱及び使用者の毎月の障害手当金支払いを棄却している。

確かに「労災保険条例」第三十六条には労働者が労災5級から6級の認定を受けたときの待遇について、使用者が適切な職位へ配置する、もしくは職を辞して毎月障害手当金を受け取ることとしており、また「他の職位への配置が難しい」条件についても触れている。しかし、何をもって使用者が「他の職位への配置が難しい」とするか、使用者の手配した仕事に適するか否かをどう判断するかについて、本条例では明確な線引をしておらず、実践にあってもこの点がよく争点となる。

一般的に、使用者側は、「他の職位への配置が難しい」状態に該当しないので、毎月の障害補償金の支払いを拒否すると主張し、逆に労働者側は、使用者は適切な職位を手配できず、「他の職位への配置が難しい」から障害補償金の支払いを求める、と主張するケースが多い。

使用者の経営状況や労働者の障害の程度はそれぞれ異なっており、立法部門が客観的な判断基準を提示するのは非常に困難である。しかし労働仲裁委員会及び法院は、この条文では明らかにされない課題について、実現可能性があり、かつ労使双方を納得させるだけの裁量基準を明確にせざるを得ないのである。すなわち、主観と客観の統一原則を遵守しつつ、客観的な証拠をもって「職位が適切か否か」「職位提供が困難か否か」を見ていかなければならない。

このとき、「職位提供が困難か否か」については使用者側が、「職位が適切か否か」については労働者側が立証責任を負うべきであろう。 なぜなら条文を文理解釈すると、職位手配義務は使用者側にあると見ることができるからである。もし使用者が有給休職休暇を過ぎた労働者へ具体的な職位を手配しなければ、それは「他の職位への配置が難しい」と見做すことができるであろう。逆に、使用者が有給休職休暇を過ぎた労働者へ具体的な職位を手配していれば、労災を受けた労働者がその不合理性を証明しない限り、使用者は適切な職位を手配したこととなる。もし使用者が職位を手配したにも関わらず、労働者によって明らかな不合理性が証明され、また職位を再調整できないときは、使用者は「他の職位への配置が難しい」と見做されてしまうだろう。

本案件においても、使用者は労災待遇を実施する際、積極的に相応の職位を提供し、法に定める相応の義務を履行しなければならない。当事者の合法的権益を侵害しなければ、費氏の不合理な請求も支持を得られることは無いであろう。